口神ノ川
くちごうのかわ
20150608初
20170625胡
【沿革】
長宗我部地検帳に「神之川ノ内永野地村」「神之川ノ内平野」「神川村」「同神之川之村」とある。
それ以降の地誌である州郡志（1704-1711）には「口神之川村」、南路志（1813）には「口神川」とある。
明治２２年（1889）４月１日、明治の大合併により、窪川郷上番の高岡郡窪川村・西原村・若井村・峯ノ上村・金上野村・見付村・大奈路村・根元原村・神ノ西村・大向村・高野村・根々崎村・若井川村、窪川郷下番の宮内村・仕出原村・大井野村・口神ノ川村・中神ノ川村・奥神ノ川村・檜生原村・寺野村・川口村・天ノ川村・秋丸村・野地村・家地川村、仁井田郷の東川角村・西川角村、これら２８か村が合併し新設「窪川村」が発足し、口神ノ川村は大字となった。
大正１５年（1926）２月１１日、窪川村は、町制を施行し「窪川町」となった。
昭和２３年（1948）４月１日、幡多郡大正町の一部（折合）を編入した。
昭和３０年（1955）１月５日、高岡郡窪川町、東又村、興津村、松葉川村、仁井田村が合併し新設「窪川町」となった。
平成１８年（2006）３月２０日、高岡郡窪川町と幡多郡大正町・十和村が合併し新設「高岡郡四万十町」となる。
地区内は、口神ノ川１－１・口神ノ川１－２・口神ノ川２・口神ノ川３・口神ノ川４・口神ノ川の５つの行政区にわかれている。班・組の編成はない。
【地誌】
旧窪川町の西部。四万十川と支流神ノ川の合流点付近一帯。国道３８１号が通り、集落は国道沿いと、南流する神ノ川右岸の山際にある。主に農業地域。平成２３年に休校した口神ノ川小学校・羽衣神社がある。
（写真は１９７５年１１月撮影国土地理院の空中写真。写真中央、南流する神ノ川下流域が口神ノ川地区）
【地名の由来】
『史談くぼかわ第5号』には郷土史家・辻重憲さんが「五社の後背に接する清浄の川である。この川も五社の北を流れる払川同様、参拝者が身を清めた川である。その地域の位置によって奥、中、口に区別された。」と述べている。
長宗我部地検帳にも見られる中世からの地名「神之川」であるが、これも漢字に惑わされた物語でないかと疑ってしまう。「払川同様、参拝者が身を清めた川」と言うが、神ノ川で身を清めたところでもう一度山越えをしなければ五社には着けないし、降り付くところは払川である。主要な往還道でもなくその往来は少なく、神の川として崇敬した歴史の積み重ねが命名に至ったとは思えない。
ゴウの音韻は、神の意のほかに「川」や「郷」の意味もある。口の郷、中の郷、奥の郷と呼ばれ、いつから流れる川を「ごーのかわ」と呼び神ノ川の字を当てるようになった。そんなにも思う。
神の川とは立派な地名ではあるが、地元の人は「くちごー（口神）」と短縮して呼び合っている。国道の標識にも「四万十町口神」とあり、停留所の標示板にも「口神」とありいずれはこれに転訛する運命なのか。地名はその時代の人に使われる日用雑器のようなもので、公称地名をも駆逐する人のチカラに驚きである。地名は生きた文化財であることを実感する。
神ノ川地名の分布は、高知県内には見られない。県外では、和歌山県印南町、長崎県平戸市、熊本県水俣市、鹿児島県錦江町。神川地名の分布は、埼玉県神川、長野県上田市、三重県熊野市である。
地内の字・ホノギ等の地名
【字】（あいうえお順）
足川、壱町切、浦ノ窪、大岩ノナロ、大窪、大田、奥足川、奥蛇山、奥蛇谷、上土井屋式、笹ケ谷、下土井屋式、下向、白皇、城ノ後、須賀崎、竹内山、竹ノ内、竹ノ内山、田島山、但馬山、立目、チカラ石、チカラ谷、茶屋ノ奈路、堂ノ川、堂ノ川山、中ケ市、中黒井ノ上、中屋式、畑四郎、フマデン、蛇谷、柳ノ川、山本屋式【35】
（字一覧整理ＮＯ．順 口神ノ川ｐ34）
1山本屋式、2茶屋ノ奈路、3須賀崎、4フマデン、5大田、6浦ノ窪、7立目、8畑四郎、9壱町切、10柳ノ川、11白皇、12足川、13奥足川、14田島山、15笹ケ谷、16チカラ石、17大窪、18中ケ市、19堂ノ川山、20堂ノ川、21竹内山、22中屋式、23下土井屋式、24上土井屋式、25蛇谷、26奥蛇山、27但馬山、28城ノ後、29中黒井ノ上、30大岩ノナロ、31下向、32竹ノ内山、33チカラ谷、34山本屋敷（再掲）、35奥蛇谷、36竹ノ内
【ホノギ】
▼爰ヨリ神之川ノ内永野地之村東ノハシヨリ付（ｐ388～391）
城ノウシロ、シヤウカタハ、大井川、梅ノ木ノタン、中谷、ミソシタ、辰巳大道、土居、中ノヤシキ、山本ヤシキ、西ノコウ、ツル井ノシタ、西ノカワ、山モトヤシキスソ、ヒワカクホ、ヤナセホリ
茶ヤンノナロ、弓場、川ノウヘ、未申大川ノウヘ、スサキ、フマテン、キヤウセンジリ、風呂コウツキ池、チウ木ノクホ、松ノ本、シモキレ、中堂ノカハ、アカハケノモト、戌亥谷、岡崎、中カイチ、シモムカイ
▼同神之川之内平野（ｐ391～393）
ハタ四良クチ、小川ヲモテ、大タ、中クホ、クホタ、ヲキノソ子、ウツシリ、丸山ノモト、永タ、タチメ、野地タ、辻堂コエ、樋ノ谷、小屋ノ谷、シモノ窪、丸タ、ヒラノ、ウワクホタ、平野シモキレ、木三良作、ミソタ、ウワノタ、ハタ四良谷、上キレ、ハタ四良クチ、モミノ木ノモト
▼神川村（ｐ393～395）
石ハラタ、川クホ、地蔵院ノ前、惣六谷グチ、地蔵院寺中、ハサコ、堂カイチ、柿ノ木タ、ヲモキレ、北ヤシキ、アシ川、コヤノ前、柳ノ川口、北ノマエ、沢ノスソ、柳野、ムロヤ屋敷、田中、クロヲ野、ヲキ新開、ユクチ、桑原カチ、ヒタ地
▼同口神之川之村（ｐ395～398）
永タ、ミノコシ、シモ谷、ヲカ、ウエノタン、岡ノクホ、白王ノモト、大クホ、ニ井ヤ畠、山ノ子、ソ子、ヲウシカ谷、アンハタケ、チカラ石、与三良ツクリ、牛ノ渕、シハタ、中アシ川、ウチヒラ、カチワラ、ヒノチ、コウタ、シモヤシキ、山ノ子、但馬ヤシキ、カミヤシキ、アシ川クチ、カミアシ川、大イワノタハ、石神ノ谷
【通称地名】
【山名】
山名（よみ/標高：）
【峠】
柳ノ峠（口神ノ川地区△南川口地区） ※三角点の点の記
【河川・渓流】
【瀬・渕】
【井堰】
【城址】
【屋号】
【神社】 詳しくは →地名データブック→高知県神社明細帳
羽衣神社/173はごろもじんじゃ/鎮座地：中屋式 ※村社。鎮座地、竹ノ内から遷宮
現地踏査の記録
地名の疑問
１）笹ヶ谷はどこ？
集成図に、字笹ヶ谷が口神ノ川地区の北側上流部にあるが、飛地が多くみられる。どうしてか
２）白皇神社
白皇神社は口神ノ川の産土神である羽衣神社の合祭神社として神社明細帳に記述されているが、字白皇に現在も鎮座しているのでは？
３）若井川大橋の袂に「丸山」
口神ノ川の国道３８１号線から四万十川を渡る若井大橋の袂の停留所名が「丸山」とある。丸山とはどこか？
出典・資史料
■長宗我部地検帳（１５８８天正１６年：佐々木馬吉著「天正の窪川Ⅰ」）
地検帳の記録によると、天正時代のこの部落は口神之川之村を本村として、神川村・永野地之村および平野から成り立っていた。（同ｐ103）
・神社
羽衣神社（村社/字中屋敷鎮座）／合祀：春日神社、丸山神社、白皇神社、六十余社
水神社、白鳥神社、黒皇神社、湯谷神社
・寺院
地蔵院、竹蔵庵
■州郡志（１７０４－１７１１宝永年間：下ｐ284）
口神之川村の四至は、北限中之川村東西十二町南北十八町其土赤有川流
山川は、城之谷、立目越、平野足皮
寺社は、天神社とある。
■郷村帳（１７４３寛保３年）
寛保３年に編纂した「御国七郡郷村牒」では、石高１７１.796石、戸数２７戸、人口１０５人、男５４人、女５１人、馬２９頭、牛２頭、猟銃０挺
■南路志（１８１３文化１０年：③ｐ301）
165口神川 仁井田郷本堂之内、又云窪川郷十三村之一也。 地百七十三石七斗九舛七合
白王明神 白王谷 祭礼九月廿五日
黒玉権現 黒玉谷 祭礼九月十二日
天人明神 竹ノ口 祭礼九月九日
白鳥大明神 岡崎家林 祭礼九月十三日
三宝権現・丸山権現 丸山ノ上 祭礼九月十五日
春日大明神・三宝権現 宮添林ノ内 祭礼九月十五日
川内大明神 祭礼九月九日
地蔵 会日八月廿四日
■ゼンリン社（２０１３平成２５年）
ｐ８７：口神ノ川、神ノ川、四万十川、口神の川橋、羽衣神社、観音堂
ｐ７７：口神ノ川、神ノ川、中黒橋、白皇橋、白皇神社
ｐ９７：口神ノ川、四万十川、若井大橋、Ю丸山
■国土地理院・電子国土Web（http://maps.gsi.go.jp/#12/33.215138/133.022633/）
口神ノ川、四万十川
■基準点成果等閲覧サービス（http://sokuseikagis1.gsi.go.jp/index.aspx）
柳ノ峠（三等三角点：標高438.02ｍ/点名：やんぎのとうげ）口神ノ川字柳ノ川1380番地
■四万十町橋梁台帳：橋名（河川名/所在地）
壱町切橋（柳ノ川/口神の川字壱町辺２６３－２） ※字名は「壱町切」
足川橋（足川/口神の川字足川３５５－１）
白皇橋（神の川/口神の川字大窪４４９－３）
大窪橋（のげつ谷川/口神の川字大窪４７０）
若井大橋（四万十川/口神の川字立目１２６－１）
若井沈下橋（四万十川/口神ノ川字立目１６８６－２）
■四万十町広報誌（平成２７年１２月号）
