もあい(催合)【下津井、もやい(希ノ川)】
下津井には「催合(もあい)」の共有山林(萱刈場)がある。地内に字カヤカリと萱刈場らしき地名もある。沖縄・奄美地方では相互扶助金融システムの頼母子講を「模合(もあい)」という。希ノ川のモヤイは同類の地名か。
共有山林の名前は、この他、本村山(寺野)、中間(天ノ川・相去)、中間山(八千数)、奈賀間山(相去)、村中山(江師)、立野(東大奈路・大正大奈路)、仲又山(昭和)、中マタ(広瀬)が考えられる。
・・もと(モト・本・元・下)【下津井、もやい(希ノ川)】
地名では「〇〇ノ本(元)」と語尾に付いて語幹の位置を示す場合が多い。
本は、木の下に一を加えて根もとを表している。①草木の根や幹②かなめ。大切な部分。基礎。みなもと。もとで③もとより。はじめから④もともと。うまれつき④主要な、などの意味を持つ。
元は、「はじめ」「頭」の意味をあらわし、足の形に頭をのせた格好だ。①人間の頭②第一③根本。万物のもとになるもの④かしら。君主⑤大きい、の意味がある。
高知県下の字で語尾に「本」の漢字が振られている字は1711か所、「元」の漢字が振られている字は488カ所と「元」の使用例が多いが、樹木や寺社、池、井流、橋などの地物の脇といった意味でつかわれる。
もり(森)【鈴ヶ森(日野地)、城戸木森(大正中津川・折合)、堂が森(野々川)、火打ヶ森(道徳)、森ヶ内(窪川中津川・大正中津川)】
モリ(古語)は、本来”森”の意味ではなく、盛り上がったの意味で、ドーム状の山にこの山名が付されている。アイヌ語説によるとmo・ri(小さな・山)。アイヌ語研究の山田秀三氏によればmo・iwa(山)が、森の原型で、普通の山ではなくて神霊の山で北海道全域に分布している。朝鮮語説によれば、頭をいうmoriが伝播したもので、現在の日本語でも高い場所を〇〇ノ頭という(モリ地名と金属金属伝承)。
森が山そのものを指す例は東北地方に最も多く、それに次いで四国地方(愛媛県と高知県)だという。東西相隔たって集中分布がみられるのは「周囲残存分布」といわれるもので、太古に山をモリという用法が全国的にあったものが、東西に分かれて残存したものである。森という語は本来、鎮守の森からきたもので、それが普通の木立の意味にも使われるようになったーと解される。「モリ」はフロ、ムロ、ヒムロという語と共に、おそらく神祭りをする神聖な樹林を指したものであろう。古くは「神社」をモリと訓ませており、「杜」という字が「社の森」に由来することがうなずける(民俗地名語彙辞典p386)。
四万十町に「〇〇森」の山名は、鈴ヶ森(すずがもり/日野地△梼原町・中土佐町/標高1054.1m)、火打ヶ森(ひうちがもり/道徳△中土佐町/標高590.5m)、城戸木森(きどきもり/大正中津川△折合/標高908.35m)、堂が森(野々川△四万十市/標高857.4m)がある。何れも中世の国境にそびえる堂々とした山である。境界はあの世とこの世を分ける結界であり、災いを遮る祈りの「神聖な樹林地」であったことだろう。
山を意味する語尾の語彙は、この「森(もり)」の他、四万十町の事例では「山(やま・さん・せん)」、「峰(みね・とう)」 があり、全国の事例では「丸(まる)」、「岳(たけ)」、「駒(こま)」、「嵓(ぐら)」、「仙(せん)」などたくさん見られる。
もりがうち(森が内)【窪川中津川、大正中津川】
中津川地名が隣接する旧窪川町と旧大正町にあったように、その大字・中津川の中に窪川「森ヶ内」と大正「森ヶ内」がある。不思議な森ヶ内の地形は、ともに集落の中心部にドーム状の山があり、まさにモリと垣内(河内・ヶ内)である。
(20170719現在)
■語源
■四万十町の採取地
■四万十町外のサイノウの採取地