愚草の川柳集⑥
水馬
2014年10月
【編集子選】
水馬 おのが時計を回しおり
あとになりさきになりして影遍路
かの戦 兵士鼠のしっぽ咬み
※みずすましは自分の立ち位置をどうやってはかっているのだろうか。愚草は遍路旅の川柳を多く詠んでいるので体験者なのだろう。夕暮れに今夜の宿を探しあて野辺の道を歩き廻る。前に後ろにと影はまわり、ときに踏みそうにもなる。影を見て自分というものが生きているとわかる。インキュベーター(孵卵器)で育ったオテンキオンブオバケにはわからないだろうな。
※「かの戦」はインパール作戦のことか、ガダルカナル島の戦いか。兵站を整えないで戦いを強いる参謀、その土壌となった日本陸軍の戦力を維持するための補給を大切にしないという最大の欠点。天皇が慰霊の旅で述べる「太平洋の各地においても激しい戦闘が行われ、数知れぬ人命が失われました。祖国を守るべく戦地に赴き・・」は戦死者の無念とは違うようだ。小田実はこれを「難死」以外なにものでもないという。鼠の尻尾をかじりながら死んでいった難死なのだ。