続・土佐の地名を歩く

 2019年1月に発表したのが「地域資料叢書18 続・土佐の地名を歩くー高知県地域史研究論集Ⅰー」

 昨年3月に刊行した「地域資料叢書17 土佐の地名を歩くー高知県西部地名民俗調査報告書Ⅰ-」の第2弾です。

  

 地名を学ぶ面白さがわかるはず。四万十町内で「この地区を調査したい」と手をあげる方、連絡ください。 

 

■『地域資料叢書18 続・土佐の地名を歩くー高知県地域史研究論集Ⅰー

 この報告書は、公益信託大成建設自然・歴史環境基金・平成29年度助成をうけて、「住民による歴史地名の記録と地域資源地図づくりーGISを用いた学際的研究を目指してー」の事業テーマについて取り組んだ成果品として出版した小冊子です。

 発刊にあたっては、前号に続き、くまもと文学歴史館・館長の服部英雄さんに巻頭の言葉をいただきました。

 古地図や旅行記、検地帳などの歴史史料には、多くの地名が現れます。この地名を通して歴史史料を空間的に捉え、史料に書かれた現地を歩くことで、その解釈は大きく広がります。本書『続土佐の地名を歩く』は、こうした地名を使った在野の歴史愛好者による地道な現地調査(フィールドワーク)の成果報告5本を掲載した研究論集です。

 

 「第1章 旅行記を歩く」では、江戸中期の18世紀後半に高知県内を歩き旅行記を記した川村与惣太の足跡をたどる。

 「第2章 古地図を歩く」には、近世と近代の古地図を使った現地調査の成果2本を載せた。地図の読み込みや文献調査、聞き取り調査などを複合的に用いて、過去の史跡を現地比定した研究で、近世・近代の歴史景観を復原する方法論を提示している。

 「第3章 山村・峠を歩く」には、歴史民俗分野の論考2本を掲載。県西部の山村や海村の生業や歴史を、文献や古老へ聞き取り調査によって明らかにしている。高知県における現地調査による地域研究の方法論として参考にしていただきたい。

 

 今回は、四万十町関連として目良裕昭・楠瀬慶太の両名から「第3章 山村・峠を歩く」テーマで2本寄稿された。

 目良裕昭の「土佐上山氏の支配領域とその構造」は、史料がすくなく研究の進んでいない中世の山の領主の支配形態を「長宗我部地検帳」と「棟札」をもとに検証を加えた意欲作。

 楠瀬慶太の「佐賀越の民俗誌―四万十町奧打井川~黒潮町佐賀間の古道を歩く」は、時代の変化とともに忘れられつつある古道の交通・流通の歴史を地元の古老とともに現地を歩きながら「奥四万十山の暮らし調査団」が聞き取り調査を進めたフィールドワークの演習作。楠瀬は「佐賀越は伊与木郷と上山郷を結ぶ第一級の”流通の道”であ”軍事の道”、”信仰の道”でもある」と述べ、「佐賀越の古道(峠道)を介して山村―農村―海村―都市がつながる”海山経済圏”とも言える経済流通圏が機能していたことが想定できる」と経済史的視点で交通網が整備されていない社会においての”峠道”の役割を検証したもの。 

 


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巻頭言 くまもと歴史・文学館/館長 服部英雄氏
20190115続土佐の地名を歩く02巻頭言.pdf
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第1章 旅行記を歩く(武内 文治)
「平成の土佐一覧記―与惣太が歩いた江戸期の土佐の山村ー」

土佐における江戸中期の旅行記『土佐一覧記』は原本が不明な「幻の書」とされていたが、県内外に残る写本をもとに1986年に室戸市の郷土史家・山本武雄氏が『校注 土佐一覧記』を刊行し、存在が広く知られるようになった。
本章では、『土佐一覧記』を史料に、旅行記を使った歴史踏査から、地域交通の歴史を現代との対比で紐解く方法論を提示する。
今回は、その第一弾となる「香美郡編」
20190115続土佐の地名を歩く04第1章旅行記を歩く(武内文治).pdf
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第2章 古地図を歩く(清水 謙次朗)
「高知市へ編入された戦前の17町村役場跡地の現地比定」

明治時代に入り大正、昭和、平成と市町村合併は進みどれだけの町村が消えていった事か。合併編入の度に役場は消えていくが、消えた村や町の役場は何処にあったか。
このテーマで古地図と自治体史等の史料をもとに高知市内を訪ね歩く。
20190115続土佐の地名を歩く05第2章古地図を歩く(清水謙次郎).pdf
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第2章 古地図を歩く(横山 有弐)
「『弘岡井筋絵図』に見る春野の歴史景観」

江戸時代初期、土佐藩の2代目藩主・山内忠義の治世に、時の執政・野中兼山が井筋の建設にあわせて開削した。
往時の井筋と新川川流域の有様を探り、絵図上での各遺構の位置と名称、現在の景観を画像で示し、現地踏査や聞き取り調査の結果もあわせて春野における兼山の水運・利水(灌漑)・治水(洪水対策)等の事業全般を総合して紹介したもの。
2021003続土佐の地名を歩く06第2章古地図を歩く(横山有弐)再修正.pdf
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第3章 山村・峠を歩く(目良 裕昭)
「山の領主・土佐上山氏の支配領域とその構造」

山の領主に関する研究は史料の制約もあって十分に進んでいない現状にある。
史料の不備を補い、上山郷の領主の実像に迫るのが本稿。土佐西部幡多郡の山間地域に蟠踞した上山氏を事例に、成立過程と支配領域の構造を解明する作業をつうじて、その実践的考察を試みる。
20190115続土佐の地名を歩く07第3章山村・峠を歩く(目良裕昭).pdf
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第3章 山村・峠を歩く(楠瀬 慶太)
「佐賀越の民俗誌―四万十町奧打井川~黒潮町佐賀間の古道を歩く」

「打井川は山の中だが、実は海に近い『大正の玄関口』だった」との言葉が印象的だった。
奧打井川地区から地蔵峠を越えれば黒潮町佐賀地域の海岸部に出ることのできる地区で、旧大正町中心部の田野々へ向かう交通の要衝でもあった。
こうした古道の交通・流通の歴史は、時代の変化とともに忘れられつつある。本稿では、歴史資料から打井川の概況を確認するとともに、地図と写真を用いて古道の調査内容を報告し、聞き取り調査も踏まえた「佐賀越の民俗誌」を記してみようとするものである。
20190115続土佐の地名を歩く08第3章山村・峠を歩く(楠瀬慶太)修正.pd
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