根元原

ごんげんばら


20150608初

20170601胡

【沿革】

 長宗我部地検帳に「平串蔵谷之出口」として、現在の東大奈路地区と一体となって検地されている。

 それ以降の地誌である州郡志(1704-1711)には「根現原村」とあり南路志(1813)には窪川村の枝村として「権現原村・神崎村 枝村新開発地也」の記述がある

 明治22年(1889)4月1日、明治の大合併により、窪川郷上番の高岡郡窪川村・西原村・若井村峯ノ上村金上野村見付村大奈路村根元原村神ノ西村・大向村・高野村・根々崎村・若井川村、窪川郷下番の宮内村・仕出原村・大井野村・口神ノ川村・中神ノ川村・奥神ノ川村・檜生原村・寺野村・川口村・天ノ川村・秋丸村・野地村・家地川村、仁井田郷の東川角村西川角村、これら28か村が合併し新設「窪川村」が発足し、根元原村は大字となった。

 大正15年(1926)2月11日、窪川村は、町制を施行し「窪川町」となった。

 昭和23年(1948)4月1日、幡多郡大正町の一部(折合)を編入した。

 昭和30年(1955)1月5日、高岡郡窪川町、東又村、興津村、松葉川村、仁井田村が合併し新設「窪川町」となった。

 平成18年(2006)3月20日、高岡郡窪川町と幡多郡大正町・十和村が合併し新設「高岡郡四万十町」となる。

 地区内は、根元原1・根元原2・根元原3の3つの行政区となっているが、各行政区とも班・組編成はとっていない。

  

【地誌】

 旧窪川町の中央部、市街地の北方。小さな山の北側、四万十川に流入する仁井田川右岸の地域。仁井田川は南に張り出した小山丘の東側を南流し、市街地の北の山に突きあたってその流れを大きく変えて北流し、四万十川に注ぐ。主に農業地域。集落は四万十川に三方を囲まれた中央の小山丘のふもとを取り巻くように展開する。主要地方道19号窪川船戸線が通る。神原神社・大元神社がある。

(写真は1975年11月撮影国土地理院の空中写真。写真中央左下部、穿入蛇行する仁井田川の右岸山裾の東側が根元原地区)

 

【地名の由来】

  根元原は明応6年(1497/室町時代末期)に、紀州の熊野権現の神霊を迎えて祀ったので権現原の地名が生まれ、後に文字を変えて根元原としたと伝えられている(窪川町 史蹟と文化財p15)。神社明細帳によれば根元原には大元神社(村社/八頭谷鎮座)と神原神社(無格社/ヤカシラ谷鎮座)の2社があるが、「土佐地名往来No272」には「地元の人の話では神原神社のことをいまも”権現さま”とよんでいるそうだ」とある。

 地名の由来ともなる歴史ある神社が、根元原の産土神ではないことが不思議である。

 

 権現の「権」は仮のことで、「現」はあらわれるということ。仏が仮に神の形をとって現われたことを示す。熊野三山のうち熊野本宮大社は阿弥陀如来(家都御子神)、熊野速玉大社は薬師如来(熊野速玉男神)、熊野那智大社は千手観音(熊野牟須美神)であるが、おの根元原の権現が何なのかは不明である。

 

 「原」や「野」の地名は多く、両方同じように野原(広い平らな場所)として理解しているが、山野の緩傾斜地、裾野の「野」の地形地名であるのに対し、「原」は同類の集団を表すという。人の生まれた土地を産土(ウブスナ)と言うが、そのナは土(土地)のことで、面積の広い地面を「ヌ」といい、「ノ」というのは「ナ」の変体であろう。

 

 松尾俊郎『日本の地名(p96)』に「何原の原(ハラ・ワラ)が原っぱではなくて、場所あるいは村落を意味することが相当に多い。漁業者の住む海岸の村を”漁師ワラ”、農家部落を”百姓ワラ”などと呼ぶ呼称は、今でも地方に残っている。ワラを人の意に用いる方言があって”あのワラが言った”などと使われる。殿原・法師原などのバラは、人に関する複数を表す接尾語であって”達””共””等”に当たる。要するにここにいうハラ・バラは”同類の集団”をさす」と述べている。高知県の方言にも同じ「ワレ(和郎)」がある。

 また、吉田茂樹『日本地名語源辞典』には「平らな原野をいう最古の地名は”ハラ”ではなく”ノ(野)”であった。もともと、大陸から佳字地名として導入され、当初は皇族の宮殿・墓地などの聖地に限られて使用された。後に”野”と”原”が混同化されたが、原野を開拓した所に”原”を使用したため。九州に多い”原(ハル・バル)”の地名は、単に原野の意というのではなく”ハル(開・墾)”の転訛または当て字が多い」と神聖地としての『原』、開墾地としての『原』と述べている。

 

 ちなみに、四万十町内の大字で「原」地名は、根元原のほか、西原、仕出原、桧生原、市生原がある。

 「西原」は西氏の同類集団の地、「仕出原」は紙垂のある新聖地、「桧生原」「市生原」は開墾地の意となるか。

 

 地元の人が呼ぶ「権現さま」は、根元原や東川角(辷道集落など)の崇敬神である。長宗我部地検帳には川津野之村(辷道付近)にホノギ「コンケンチ」があり、字「権現谷」「八頭」ある。また根元原には字「八頭」「八頭谷」がある。

 不思議なことに根元原の全図では産土神である大元神社が鎮座する「八頭谷」と神原神社が鎮座する「八頭谷」が2か所離れて示されていて、神原神社の八頭谷」は飛地(東川角・辷道)になっている。 

 

 これらのことから「権現さまを崇敬する(同類の集団)村落」と理解したい。 

 

 


地内の字・ホノギ等の地名

【字】(あいうえお順)

 大切、五反切、桜ケ谷、(山林)、下渡瀬、杉ノ下モ、頭地、関ノ上、船附、高森、茶園、仲切レ、計岩、計台、壱人越、壱人越、不用ダバ、古井、松ケダバ、南ノ切、南ノ切レ、南壱人越、南一人越、南八頭、森ノ下、八頭、八頭谷、渡リ上リ、ヲコ谷

【29】

 

(字一覧整理NO.順 根元原p18)

 1桜ケ谷、2計岩、3壱人越、4南一人越、5高森、6森ノ下、7船附、8茶園、9八頭、10頭地、11関ノ上、12下渡瀬、13仲切レ、14南八頭、15大切、16五反切、17南ノ切、18古井、19松ケダバ、20渡リ上リ、21(欠番)、22不用ダバ、23杉ノ下モ、24(山林)、26(欠番)、27ヲコ谷、28八頭谷

 

【ホノギ】権現原

〇高岡郡仁井田郷地検帳 五(高岡郡下の2/検地日:天正17年3月12日)

 ▼平串蔵谷之出口(p504)

 ▽河ヲ戊去亥渡付(p504)

 平串アンメン権現原

 ヨフサカ北ウラ谷川ヲ渡付(p504~505)

 梅ノ木サコ、カケノ平ホキ、子子サキウ子、クホタ、シヤウシカ谷

 

 宮ノムカイノ内(p505~506)

 谷クチ、宮ノムカ、新屋タ、スサキタ、コウ谷、ウツシリ 

 

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210根元原字名一覧表.pdf
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210根元原全図.pdf
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210根元原・集成図.pdf
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【通称地名】

 

 

【山名】

山名(よみ/標高:)

 

【峠】

峠(地区△地区) ※注記

 

【河川・渓流】

八頭谷

 

【瀬・渕】

 

 

【井堰】

 

 

【城址】

 

 

【屋号】

 

 

【神社】 詳しくは →地名データブック→高知県神社明細帳

大元神社/37おおもとじんじゃ/鎮座地:八頭谷 ※村社

神原神社/39かんばらじんじゃ/鎮座地:ヤカシラ谷 ※崇敬神(根元原、東川角本田及び東川角新田辷道)

 


現地踏査の記録


地名の疑問


出典・資史料

■長宗我部地検帳(1588天正16年:佐々木馬吉著「天正の窪川Ⅰ」)

 この部落は、今の行政区画上の権元部落と長宗我部地検帳であつかっている範囲とは少し違うように思う。地検帳の記録では蔵谷の出口周辺と、根現原と呼ばれた地域を一続に取り扱っている。(同p227)

・神社

 大元神社(村社/字八頭鎮座)/合祀:竈戸神社、山之神社、水神社

 神原神社(無格社/字ヤカシラ谷鎮座) 

 

■州郡志(1704-1711宝永年間:下p258)

 権現原村の四至は、東南限川西限立山北限火取之越縦十一町横四町其土黒

 寺社は、権現社とある。

 

■郷村帳(1743寛保3年)

 寛保3年に編纂した「御国七郡郷村牒」では、石高94.063石、戸数7戸、人口37人、男19人、女18人、馬8頭、牛0頭、猟銃0挺

 

■南路志(1813文化10年:③p)

168窪川村 古名本郷、仁井田郷本堂之内 地四百一石七斗八升三合

 今本田三百九十二石余、新田百二十一石七斗八舛三合、家數百三十二軒、人高四百三人

 〇権現原村・神崎村 枝村新開発地也

歸命権現 権現原御留山 正体石 祭礼九月十一日 ※現在の大元神社

(以下、窪川村分のため略)

 

■ゼンリン社(2013平成25年)

p60:根元原、仁井田川、主要地方道窪川船戸線、仁井田川、権元原橋、権元橋、大元神社

p48:根元原、仁井田川

 

■国土地理院・電子国土Web(http://maps.gsi.go.jp/#12/33.215138/133.022633/)

根元原(ごんげん)

 

■基準点成果等閲覧サービス(http://sokuseikagis1.gsi.go.jp/index.aspx)

根元原(四等三角点:標高257.77m/点名:ごんげんばら)東川角字権現谷乙923-1番地

 

■四万十町橋梁台帳:橋名(河川名/所在地)

権元橋(仁井田川/窪川字下渡瀬159-1)

 

■四万十町広報誌(平成25年6月号)

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ぶら〜り散策0210【根元原】20130601.pdf
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