20170812胡
やかしろ(ヤカシロ)【日野地、弘瀬/ホノギのヤカシロ(高野、仕出原、日野地)、ヤカシロヤシキ(七里)/安芸市、香南市、香美市、本山町、越知町】
長宗我部地検帳にも記録される中世以前の地名で、ホノギには、ヤカシロ(高野・仕出原・日野地)、ヤカシロヤシキ(七里・小野川)、ヤカシロサイノヲ(七里・小野川)がある。県下各地に見られる。
地名用語語源辞典には「やがしら(谷頭、矢頭)」として①ヤ(萢)・カシラ(頭)で、湿地の源頭。井の頭に類似②ヤ(岩)・カシラ(頭)で「岩頂の山」③ヤト・ヤチ(谷戸・八戸。低湿地)に谷頭を当てたもの。ヤトには部落の意味もある(神奈川の方言)、などの意味がある。
高知新聞連載の「土佐地名往来No306」に高知市五台山のふもと「屋頭(やかしら)」が掲載された。屋頭は各戸の頭の義で、五台山地区でどこよりも先に家が建ち集落が形成されたことによるという。また、一説には浦戸湾の入江の先、江の頭が屋頭に転じたものではないか、ともある。
日野地地区の中日野地集落の上段にヤカシロ(ホノギ・字)がある。湿地とは考えられないので「日野地村でどこよりも先に家が建ち集落が形成された」という五台山の屋頭に類した地名だろうか。
やけそ(ヤケソ)【金上野、希ノ川、大道、大ヤケソ(仁井田)、ヤケソ川(古城)、ヤケソ谷(金上野・久保川)、焼ケソ谷(金上野)】
四万十町外では、ヤケソ(越知町横畠中・四万十市三ツ又・四万十市手洗川・四万十市蕨岡甲・四万十市横瀬・四万十市森沢・四万十市西土佐中家地)がある。
四万十町や四万十市などに多く分布し、接尾語に川や谷が付く例が多い。
ヤケは「焼け」で、酸化して赤く見えることか。ソは磯(イソ)。アイヌ語でイ・ソ(iso・so)は「海中の波かぶりの岩」となり日本語の磯(イソ)同じである。河谷の鉄分の多く含んだ岩礁が赤く見えることからヤケソとなったのではにか。
また、山間地に多く見られることから「焼く」が焼畑を表しているかもしれない。
やしき(屋敷・屋式・屋鋪)【茅吹手地区の集落、その他各地】
茅吹手地区の集落。四万十川右岸の国道381号線沿いの集落。
字やホノギで語尾につくヤシキ地名で語頭には所有者や所在の方位や目標となる樹木名を冠したものが多い。ヤジ、カマチ、カイチ、カコイなど屋敷ないし屋敷地(屋地)と同義語。
やしきとうげ(屋敷峠)【津賀△茅吹手】
やすば(休場)【大休場(東川角)、権現の休み石(打井川)、石ノ休場(浦越)】
山道越しの休息場所。たいてい5,600mに一ヶ所、見晴らしの良い水の湧くようなところに石を置き、荷担ぎの者の休息地にしたという。大松や地蔵などもある。接頭語や接尾語で一番多いのが「石」で石休場、石ノ休場、休場石などで石に腰掛け一服する風景がうかがえる。松休場、榎休場、松ノ休場などの樹木地名も多い。その場が村界(界木)であるか一里塚(松が多い)かは別にして、木陰は休息を数倍楽しませてくれる。休場谷、休場ノ谷など谷も多いのは往来に必要な水を確保するためランドマークとしたのだろう。休場地名は、昔の往還道には必ず刻まれている地名で、「登尾」「休場」「坂」「峠」「休場」「オリツキ」などの往来地名をなぞっていくと消えた道を復原することができる。今は「休場地名」の多くは戦後植林された杉ヒノキで視界を遮られているが、さぞや昔は遠くを見渡し心地よい風をうけたことだろう。
高知県下の小字名で200カ所を超える休場地名がある。海岸沿いには少なく、槙山への塩の道や韮生往還、北山越え、松山街道など息せき切る山越えによくみえるのも合点がいく。
やなぎがさこやま(柳がさこ山)【市ノ又△芳川/標高608.8m】
やなぎせ(柳瀬)【井﨑地区の集落・組】
やなせ(梁瀬)【十和川口地区の集落】
やなぜ(柳瀬)【七里地区の行政区】
やはず(ヤハズ・矢筈・ヤハズダ)【市生原】
地名用語語源辞典に「①矢筈の形による見立て地名。山名に多い。②ヤハ(柔)・ツで湿地系の地名もありうるか→やわ」とある。
矢筈とは、矢の尾部のV字形に加工された弓弦を受ける部分をいう。その逆V字形状の山形を見立て「矢筈山」という。
全国にある山名であるが、高知県でのおススメ登山は土佐矢筈山(香美市大栃△徳島県三次市東祖谷/標高1,607m)。国土地理院地形図には山名が表示されていないが、山頂からは東に綱附森(1,643m)、北に寒峰(かんぽう/1,605m)などの祖谷山系、南に高知県の山々を連ねた眺望の良い山。登山の起点は綱附森登山と同じで矢筈峠(別名がアリラン峠)となる。峠の小平地には駐車場もトイレもあるので安心。経路は香美市から国道195号線、大栃から県道49号線~林道経由で行く。京柱峠からも登山できる。
四万十町では市生原の字名に「ヤハズダ」がある。高加茂神社の沖、県道より川側にある圃場整備された田がそれである。田であることから矢筈の形を見立てたものとは考えられない。耕地整理される前は、山本谷に沿った湿田であったと考えるとヤワ(柔)・ツ(処。トと同じ場所を示す接尾語)と思える。
やまかぶ(山株)【替坂本地区の集落】
仁井田川右岸の六反地地区に隣接する替坂本地区の集落。
やませ(山瀬)【古城地区の集落】
やまめかいち(ヤマメカイチ)【寺野、高野、大正大奈路、木屋ヶ内】
漁師はヤマを立てて漁場を選定するが、その漁場をヤマメ(島根県大社町/民俗地名語彙p414)。魚見をヤマミ(山見)と称している地域は多い。魚群を発見し、海上の天候を望見する場所をヤマミバ。カイチは開発予定地域(→カイト参照)
(20170719現在)
■語源
■四万十町の採取地
■四万十町外のサイノウの採取地