愚草の川柳集⑭
夜とぎ
2018年暮
【編集子選】
知の拠点 盲千人 マッチ擦り
裁量のクニの時計で 死を刻み
不条理の紙 不可逆の墨を塗り
慰安婦も微用もあり 天つ国
おぞましきアラブの春の 夜とぎ哉
転生のほとけ苦界 鬼と化し
逝きゆきて 苦海浄土に生きる 女
※「夜とぎ」はお通夜の夜、身近なものがともにひと夜を過ごす儀式。病人に夜寝ないで付き添うこともいう。
※いつも句集タイトルの意図を考える編集子だが、「夜とぎ」はアラブの春を詠んだ一句しかない。「おぞましき」をどう読むのだろうか。北アフリカ、中東では独裁政権から解放される民主化運動を「アラブの春」と呼んだが、あれから10年、宗教と政治と外部干渉のみつどもえによる民主化への途上か。
※2018年もいろいろあったが、愚草が一番許せないのは天野記者が特集連載した「高知県立大の焚書問題」のようだ。
※下2句は石牟礼道子に捧げたもの。「苦界浄土」は坂上ゆきの聞書による作品。「ゆき逝きて」ではない。「ゆきゆきて神軍」は天皇にパチンコを発射した奥崎謙三の映画だが、有名なフレーズ「知らぬ存ぜぬは許しません」は愚草に共通するテーマである。