愚草の川柳集⑰
コロナ考
2020年秋
【編集子選】
不条理の世に食みでる コロナ哉
コロナなき真空地帯に 人はなく
国亡びメディア囀る 雲の上
私物化のモノサシ呑んでるヌエ一尾
※「不条理」といえば高校生の時に読んだ、あの夏の砂浜、アルベール・カミュ『異邦人』を思い出す。そのカミュの代表作が『ペスト』
疫病は戦争と飢餓とともに人類の三大災禍といわれる
そんな災禍に、昔は異形の妖怪「アマビエ」で、今は「自粛」。どちらも祈り頼みに違いはない
※『愚草の川柳集』の17集は「コロナ考」である
※呼吸できない息苦しい世界を「真空地帯」という。愚草のいう「コロナなき真空地帯」とはどのような世界なのか
愚草の青春時代は戦後のベストセラーとなった『真空地帯』世代である。この野間宏のこの作品は軍隊の内務版生活の異常さを描いたものである。ある人は「天皇」という字を一度も使わずに、天皇制にこのくらい手痛い批評を向けたものは、戦後おそらくあるまいという。日本の悪と歪みとしての「軍隊=真空地帯」でもって、影絵のように日本を浮きあがらせている野間の作品。それに共感した愚草は、今の政治を「真空地帯」といってるのだろうか
※「私物化のモノサシ」も難解。本来、「ものさし」はだれもが共通してものを測る基準となるものであるが、立憲主義を放棄して裸の王さまがモノサシになってるようだ。侍従・瓦版も「忖度」するから、なにが本当やらさっぱりわからなくなってしまう
※この1年間「コロナPCR検査の拡充」がいっこうに進まない不思議。科学者のいない政権は小さなマスクを配るのが国家の役割とおもっている不思議